ねこよりまるい | 性虐待サバイバー

性虐待サバイバーの体験記と日常。虐待から10年、元気に生きています。似た経験をされた方、他のことで辛い方、そうでない方とも繋がりたい。できる活動や勉強を少しずつ。

性加害者の視点を考える

※性加害者の視点について書きました。
人によって気分が悪くなる可能性があります。
無理なさらないようにお願いします。




犯罪心理学を専門とされている方とお話する機会があった。

性犯罪加害者に対して出所後の再犯を防ぐために
実際に働きかけをしている方だった。


加害者の視点について考えるのは初めて。


それまで加害者の視点を深く考えたことはなかった。
抱くのは「どうしてそんなことを」という怒り、嫌悪感、悲しみ、軽蔑…。

ずっと被害者側から視点を動かしたことがなかった。




以下は、刑務所内での性加害者の様子について
聞かせてもらった、そのメモ書きだ。



性加害者は認知の歪みを抱えていることが多い。

性差別的な認識だったり、
相手もそれを望んでいると思い込んでいたり。

その歪みをただす必要がある。
そして再び罪を犯さずに生活できるようになる必要がある。


そのための刑務所内で行うワークの一環に
罪を犯した当時のことを思い出して書き出す、というものがある。
当時の状況、その時の被害者の様子を書き出すそうだ。

しかし最初はなかなか書けない。


そして無理に向き合おうとすると具合が悪くなるらしい。

ノートに書き出そうとしても
ほんの数行しか書けず、苦しくなる。


ある日刑務官にそのノートを見られた。
その時「こんなことをしていて辛くないのか」と言われた。


その一言でその人は
犯した罪と向き合おうとしていることを、誰かに認めてもらえたと思えたそうだ。

以降、より罪と向き合えるようになり、治療が進んだ。




加害者にも段階がある。
どれだけ自分が犯した罪と向き合えているか、その段階は人それぞれだ。


段階によっては
「もっと被害者のことを考えて…」
と言われても辛くなって耳を塞いでしまう。
正論が受け入れられない。


犯した罪は許されないことだが
その罪と向き合おうとしていることを
誰かに受け止めてもらうことで
前に進めるようになる。


「加害者が治療を受けられるなんて」
という社会や被害者の声もある。


性加害者に対しては
社会も感情的になりやすい。
「極刑にすべし」「去勢するべき」
そんな声をよく耳にする。

叩くだけ叩いて
その後に関しては無関心な人が大半だ。

加害者も孤立する。


(私も性犯罪、虐待の事実を見聞きすると怒りや悲しみが湧いてくる。

泣き寝入りする被害者が多い中で
加害者は刑務所の中で治療を受けられるのか…
と腑に落ちない思いもある。)

だが

性加害者が必要な行程を経て
認知の歪みを正すことで


再犯率が低下するならば

それで新たな被害が1件でも減るならば


それは私にとっても救いになることだと思った。




帰宅後
山本潤さんのエッセイ

13歳、「私」をなくした私 [ 山本潤 ]

を読んでいると
加害者の心 という章があった。


なぜ加害者が加害に至ったのか
その背景を冷静に分析していた。

加害者のことを考えるのは
段階によっては余計に辛くなってしまうので危険だが

俯瞰的に加害者の生い立ちや性質を眺めて
加害に至った背景を分析することができると

それまで自分の中でヒトの形をしていなかった加害者
(どす黒く汚く軽蔑すべき存在、人間として認められなかった存在)が

ただの「歪んだ認知を抱えた弱くて小さな1人の人間」に
姿を変えるのかもしれない。




辛い時は
「どうして私にあんなことをした!?」
と、胸ぐらを掴んで問いただしてやりたい気持ちがあった。


しかし、本書にもあったが
「加害者はその答えを持っていない」のだ。
父も、ただ自分の無力感や劣等感を晴らすために性暴力を行っていたのかもしれない。




また、回復途中でそれまで言えなかったことを加害者に伝えたくなるのは自然なことで
そうやって加害者と向き合うことが回復につながることも分かった。

(私は夫にぶつけたり、送れないメールにしたためたり、時に本人にぶつけてしまったりしたが、
本人への接触はこちらが期待する反応が得られないことで傷を深める可能性があるので危険。この作業は専門家と一緒に取り組むのが望ましい。)



回復の道のりはそれぞれかもしれないが
こうして加害者と向き合うことで自分の中で止まっていた時間が動き出し、前に進めるようになる。




章の中で


「それまで、性加害をした男などみな男根を切り取って(地球にいると怖いから)宇宙のどこかの星に打ち上げてしまえと真剣に思っていた。
(略)
性犯罪加害者が有罪となり刑務所に行ったとしてもいずれ彼らは社会に帰ってくる。
そのとき、再び性加害行動をしない人間になってくれることが大事だと、今は思っている。」


とあった。

とても共感できる一節だった。

(この本は私のことが書いてあるの?と思うくらい共感の嵐だった。また紹介したい…)





色々書いたが
加害者の視点を考えた1日となった。

自分の中に新しい空気が入ってくる感覚だった。




認知の歪みはどのようにして起きるのか

考えていきたいし


性教育に携わりたい気持ちがまた強くなった。