赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア
トラウマはどうして起きるのか
また、どのように付き合っていけばよいのか
知りたくて、この本を手に取りました。
赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア: 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本
表紙のイメージ通り読みやすく
一方で、トラウマに関してかなり詳しく説明されていて、分かりやすかったです。
読んだ内容を一部紹介します。
トラウマ=悪ではない
トラウマと聞くと悪いイメージがありますが、
「似た状況を避けようとする」
「フラッシュバックを起こすたびに、周囲にその危険を何度も伝える」ことは
自分を含め、みんなの安全につながることで
私たちが生きのびるために兼ね備えている仕組みでもあります。
しかし困ったことに
トラウマは日常生活に支障をきたすこともあります。
トラウマ記憶は冷凍保存される
普通、人の記憶は時間と共にセピア色に薄れていきますが
トラウマ記憶は違います。
トラウマ体験は、脳内で一度に処理するには容量が大きすぎます。
そこで脳の中で冷凍保存されて、普段の記憶とは別の場所にしまわれます。
「解離」といういつもの自分とは隔てられた場所で
なるべく思い出さないようにしまい込まれます。
しかしこの記憶は、何かのきっかけで瞬間解凍されます。
少しずつ解凍されることはなく、一度にすべてが溶けて
トラウマを受けた時の五感、感情、認知や思考がそのまま一気によみがえります。
まるでそのできごとが、今起きているかのように生々しく再現されます。
(フラッシュバック)
PTSD(トラウマ体験による後遺症)
単一の事件(犯罪被害や交通事故)によるトラウマから起こる症状では
「再体験症状(無意識に記憶がよみがえる)」「過覚醒症状(神経が高ぶる)」
が強まる傾向にあります。
また、虐待やDVなど長期にわたって慢性的に繰り返されるトラウマの場合は「麻痺」「解離」が強く出ます。(複雑性PTSD)
日常的なトラウマ体験の中で、「感じなくて済む(麻痺)」「それが自分ではないようにすることで自分を守ろうとする(解離)」のですが、それは一時しのぎにすぎず
むしろその結果
・感情の調節が難しくなったり
・自己破壊的な行動をしたり
・自己イメージや対人間関係に問題が生じたり
といった障害が現れてきます。
トラウマの治療①フラッシュバックが起きたら
フラッシュバックが起きた時、
「これは症状なんだ」と気づいていることが重要です。
過去のつらい体験がよみがえってきたとしても、
つらかったのは「あのとき」であって「今」ではない。
「これは症状だ」と分かるだけでも、落ち着きを取り戻すことができます。
トラウマ治療は過去の傷を治すことだと思っている人もいますが、
過去は変えることは出来ません。
トラウマから回復するということは
「過去の傷に影響を受けている今」を変えることです。
トラウマ治療②語ることで記憶を再編集
批判されない安全・安心の中で
トラウマ体験を語ることはとても意味のあることです。
相手を信頼して語ることができたら、
徐々に感情が出てくるかもしれません。
「あのときは本当に怖かった…」と感情を交えながら語ることができたら
情動の記憶が揺さぶられ、記憶の形態が変わり
具体的な五感や感情が消化されていきます(トラウマの処理)
記憶は常に改変されています。
語るたびに焦点が移ったり、
自分にとっての意味が変わったりします。
トラウマ記憶も安全な場所で何度も語るうちに、
それにまつわる感情や感覚が整理されて、
今を侵食することのない過去の物語記憶になっていくのです。
話すことはもちろん、ブログに書いたりすることも、
とても意味のあることだと分かりました。
本の冒頭で特に印象に残った内容を紹介しました。
自分の心や誰かの心の声を聞く際に
とても大切なことが書いてあったと思います。
本には慢性トラウマの詳しい症状や、回復のステップなども書かれています。
詳しく知りたい方にオススメです。
赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア: 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本